前回の記事で大学院とはなんぞやということで、博士と修士、そして学部の学生がやる研究についてまとめました。こういう話はひいらぎやが今更まとめる必要も無くいろいろと整理もされているところもあるわけですが、Matt Might氏がまとめている The illustratted guide to a Ph.D. が非常にわかりやすいです。このコンテンツは Creative Commonsにて再利用可能とされていますので日本語に雑に(笑)翻訳して紹介させていただきます。
人が生まれてから博士を取るまでの知識の変化
さて引用する内容はPh.D.とは何かを説明するための資料です。図もすべてMatt Might氏のサイトからお借りしています。
ちなみにPh.D.とは何でしょうか。日本語では博士号というとDoctorといったりします。前の記事でも博士課程の学生の一年生をD1と呼ぶといったりしました。ただ、このDoctorという用語はお医者様と表現が同じです。Doctorというと、お医者様なのか博士なのかがわかりません。そこで英語ではPh.Dという用語を使います。
Ph.D.はDoctor of Philosofy の意味です。そのままだと哲学博士という意味なのですが、現在の日本では博士号のことをPh.D.と呼ぶと考えて良いと思います。
まず想像してみて下さい。こちらの円に現在までの人類が気づきあげてきた英知のすべてが入っています。
小学校を卒業するまでにはこの英知の基本的なところを学習します。
そして博士号を取得したあとは、自身が新たに開拓したスペースを取り込んで最初にもどった縁をまた押し続け、新しい領域を開拓し続けるのです。
博士号を取るまで、取ってから。
理系の大学の先生方は多くの場合、博士号を持っています。先生方は常に新しい部分の縁を押して新たな研究成果を出して論文を発表しています。押せなくなってしまうと研究者としては終了のおしらせです。ただ、いろんな研究の仕方はあります。
一般的な会社でもそうですが、地位が上がっていくと、粒度の細かい実験など自体をするのではなくて、研究や事業全体を統括していくという働き方もあるわけです。教授になると研究室を運営するという意味で、自身が手を動かすのではなく、学生と連携して方向性の判断や企業との協力などに注力している先生も多いです。
イマドキの世界ではどんどん新しいフィールドが生まれています。そういった新しいことをやりたい学生をどう指導するのでしょうか。新たな技術に関して言えば先生には専門知識はありませんね。ただ、新しい技術は古い技術の裏付けがあるからこそ生まれてきているのです。そういった知識を元にそして、普遍的な研究の進め方の知識をもとに指導していきます。場合によってはある程度離れた場所、先ほどの絵の修士課程のレベルの知識から一から勉強して別の分野の研究を進める方もいらっしゃいます。分野は違えど一度通ってきた道ですので、速度は滅茶苦茶速いです。
そして、過去は理論的なアイデアがあったけれどそれを実施するための技術が足りなかったというケースもあります。過去のアイデアを今の技術を元に作り直したらすごい物ができたというものもありますね。こういったベースの知識はそれぞれが流行った時代を研究者として生きてきた方々にはかないません。
ちなみに、会社の重役さんで「博士課程中退」という肩書きを見ることも多かったりします。研究で最新の状況をみて開発をしていたら、それが商売になることに気づき、自身で会社を作って忙しくなってしまったというケースが多いです。先日聴いた本にもすこしありましたが、学校での学習とそれ以外の時間が全く切り離されているわけではありません。研究と社会は当然つながっているのです。ですので、研究で成果を出してもそれを商売として成果とするかは自身の選択になります。