本書は日本にコーチングを導入したという著者が2000年に出版した「コーチングが人を活かす」(新じゃないとのです)を、それからの経験などをもとに改訂したものです。20年間の経験でということですね。コーチングとはコーチングされる相手も(そしてコーチ自身も)わかっていないが、きっと答えがある内容について一緒に考えて、対象の人自身でその答えを見つけ出すために行われる対話です。そのためにこうしたら良いという実践的なスキルが紹介されています。2000年版では相手から答えや意見を「引き出す」という言葉を多用したそうですが、それだと、どうしてもコーチ持っている答えに誘導するといったイメージがあるのでそこに気をつけ「一緒に考える」という点に重点を置いて書かれたとのこと。
【audiobook.jp】 新 コーチングが人を活かす 聴き放題対象 著者 鈴木義幸 |
実践的な64のスキル
この本ではコーチングがなんたるかを書いてあるかと言われるとそうではありません。コーチングがなんたるかをわかっていて、そして、むしろ既にコーチングを行っている人たちが陥りやすくて、そして理解できていないような間違いを指摘してくれているという印象が強いです。以前聞いたコーチングの本としては「ザ・コーチ」があります。こちらは物語形式で、ある一パターンについて紹介をしていた入門書と言えますが、この本は具体的な指南書です。
先ほども書きましたがあくまでコーチと対象者は対等で、同じ目線でお話しをすることが大事といい、コーチが上にいても下にいてもダメというのがある程度の事例の紹介とともに解説されています。
- 相手から意見をひきだすには「なぜ」という言葉ではなくて「なに」という言葉を使うと良い
- 相手に安心してもらうためには、オウム返しに行ったことを返す
- 相手が必ず答えを見つけられると信じて(口に出さないがそのオーラが伝わるように)対応する
こういった内容です。こういった内容は当たり前だなと思う内容から、なるほどなと思う内容までいろいろとありますが、おそらくそれぞれの読者がどれを当たり前と思い、どれをなるほどなと思うのかは異なってくるのだと思います。それぞれの考え方やこれまでのやり方は違うのですから。
そして本書の中でも子供への対応の仕方にも触れられていましたが、「コーチング」とは、職業としてコーチをしている方々ではなく、人とふれあっている人には誰にも必要な考え方であり、そういう意味でもこの64のスキルは有効だと思います。
ただ、なぜそう考えれば良いかそうすれば良いかということについての詳細は説明されていませんので、学問的に学ぶということであればおそらくもっと専門的な書籍にあたるか学校に通うのがよいのかもしれません。
9月にジョギングをしながらaudiobook.jpで聴いた本の2冊目はこの本でした。ちなみにaudiobook.jpの紹介はこちらです。 これもブログを書こうと思う一つのきっかけになったのでした。自分のあり方をしっかりアウトプットし[…]
コーチって何だろう
本書を読んでいてコーチって何だろうと考えてしまいました。ひいらぎやも「コーチング」という概念自体は知っていましたが、どうしてこういう職業が最近(といっても結構前なのでしょうね)話題に上るのだろうと再度考えさせられました。
人は、自動、生徒、学生を経てから社会人になるわけですが、社会人になると途端にそれまでいた「先生」がいなくなるのですね。少なくとも高校生までは担任の先生がいて進路指導など勉強以外にもいろいろな相談にのってくれます。それは望まなくても面談などがあって強制的に受けているのですが、それが確かに社会人になったら急にいなくなるのですよね。
そういったときに、自分の進路や考え方があっているかを相談できる相手を見つけられるかは自分次第です。そうですね。自分だけではなくて自分の置かれた環境にも大きく影響を受けます。そうしたときに自分がどうあるべきか、どうするべきかといった頭の整理を手助けをしてくれるのがコーチなのですね。
本著の中で、コーチはカウンセラーやコンサルタントとは明確に違うとされています。カウンセラーやコンサルタントはそれぞれで答えを持っていてそれを持ってそうしたらいいという指導をいわば授けるひとであり、コーチは一緒に考えてくれる人です。
そういった友達がいるひとはそれでいいのかも知れません。もちろんうまい下手がありますからそういう人がいたから完璧だぜというわけではありませんが、それはコーチをお願いしたとしてもいいコーチに巡り会えるかと同じですね。
ひいらぎやも、今人生をふりかえって、あのときどうすべきかを誰かに相談できたら、もしくは、あの人に相談してみれば良かったのかも知れないなとおもう転換点があります。周りに相談できる人がいても、自分の気持ちとして相談できたかどうかは別なのでなかなか難しいところですが、コーチはそういったところをすくい上げてくれる存在なんだろうと感じたのでした。
人のコミュニケーションが難しくなっている昨今、そしてこれまで余りうまくそういう「考え方」「生き方」についての技術移転をしてこなかった世界では重要になってきた役割なのかも知れません。
さて、ちなみに、本書は最初に言っている「引き出す」から「一緒に考える」という手法を紹介しているかというとそうでもないかなと見えてしまいました。
コーチという英語自体が指導するという意味ですので言葉の再定義から必要ではないのかと思ってしまったりしますね。ちなみにコーチという言葉の由来は、人を乗せる馬車やバスといった意味ですので、その由来まで戻ると著者がいっている意味に近づくのかも知れません。