本著はマッキンゼーとボストンコンサルティング(ボスコン)の双方に所属経験がある著書がその経験からコンサルとはという点と、今後コンサルとはこうあるべきだという点をまとめています。特にマッキンゼーとボスコンの対応の違いについて述べており、それぞれの善し悪しではなく、それぞれのスタイルによる手法の違いなどを取り上げています。また、問題解決の技巧についても述べられており問題解決のための様々な考え方に触れることが出来ます。
【audiobook.jp】 コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法 著者 名和高司 |
が、聴いていてずいぶん終わらないなとおもったのですが、あとでaudiobook.jpの本の紹介のページをよく見たら再生時間 10:47:16 とありました。10時間超えは初めてです。ひいらぎやは2.5倍の速度で聴いていますが、それでも4時間以上かかっていますね…。紙の本としても512ページあり、とても満足できる内容です。
マッキンゼーとボスコンの違いはIQ思考かEQ思考か
既に述べましたが本著ではマッキンゼーとボスコンの違いについて再三にわたって比較がされています。端的に言うとIQ(Intelligence Quotient)のマッキンゼー、EQ (Emotional Intelligence Quotient)のボスコンです。IQは皆様ご存じの知能指数ですし、EQも30年くらい前にはやった気がしますが、IQではなく心の力が大事という感じで用いられることが多い気がします。
マッキンゼーは企業の問題点を短期的に解決するために答えを確実に見つけ出し、そしてボスコンはどうしたらいいのかを一緒に考えるということから数年にわたって一緒に問題解決していくと述べられており、それぞれいいところもあり悪いところもあるとしています。そしてもちろんそれは必要とされるケースは異なります。
ひいらぎやはコンサルの事はあまりしらないのですが、企業によって、そしてこんなに有名な2社が全く違うやり方をとっているというのは当たり前でもあり、逆に驚きもありました。コンサルとはなにかということが再度わからなくなります。
著者はコンサルは問題解決の請負人だといいます。問題が発生したときに初めて呼ばれてそしてその問題を解決していく。そして本来は問題が解決したあとも(きっとその前からも)チャンスをみつけてそれに乗れるようなアドバイス出来るようになるべきともいいます。これを機会発見請負人としての役割だと。
これを聴いていて、東洋医学か西洋医学の違いのようなものかなと感じました。問題が生じたときに呼ばれる人は西洋医学の先生ですね。問題をピンポイントでみつけてその直接的な原因を排除し体を治す。そして、健康のように見えるときにも病気を予防する、未病の状態として常にケアを怠らないようにする東洋医学の考え方の差です。実際には、チャンスを見つけてより健康的になるというところが企業の場合は成長につながるはずなので少し違うきもしますが、そういったイメージを持ちました。
そして最後に一番大事なのはIQでもEQでもなくJQだと説いています。Judgement Quotientです。正しいかどうかです。IQは論理的に物事を考えることですが、これはAIにもできると言います。ビッグデータをもとにしたデータ処理で論理的な解法は求められるため機械(ここではペッパーがあげられています)でも出来ると。EQは感性の世界なので正確性が逆にありません。そこでJQという判断をする力が大切になってくるといいます。IQは裏にあるビッグデータが汚染される(データが偏る)と偏向的な結果が抽出されます。それではいけないだろうということですね。
ということで、人間ができることはJQなのでJQをがんばろうと言っていますが、逆にこのままではコンサルはAIに負けると主張されています。ただAIはデータが偏向すると壊れるとも言っているので話は矛盾していますね。ひいらぎやはAIがすべてを出来るようになるとは思っていないので、この矛盾はそうだろうなぁとおもってみていたりはします。
まずは表面化した問題の原因を見つけること。そして What、 Why、 Why not、 Howの四段階 で問題を解決する。
ある問題が発生したときに、その問題だけに着目していて解決するでしょうか。いえ、その原因を絶たなければ解決はしません。その問題を見つけて定義することこれが非常に重要だとしています。
これが出来るかで、問題への解決のアプローチが違うはずであり、ここで間違えると本質的な解決に至りません。
そして問題を見つけたらそれを解決するために突き詰めていきます。まず「What」何が問題なのかです。これがわかれば、次には「Why」それがなぜ問題なのかを考え、そして、次の段階「Why not」は本書中で何度も繰り返される重要なステップです。なぜその問題がまだ解決されていないで放置されているのか、それを考えなければいけません。その原因をさらに探りその根本を解決すれば問題は霧散します。Howのステップですね。
本書では多くの例も挙げられており、実際に企業が失敗した事例、成功した事例も述べられているのでイメージがしやすいと思います。
コンサルのためのツールの説明も大量に
本著では、コンサルのための分析ツール(考え方)も非常に多く説明されています。これらを勉強するだけでも非常に価値がある本だとはおもいますが、おそらく、実際のコンサルの方以外はこれらのツールを実践的に使うことがないので、頭に残らない気がします。いろいろなツールを使って分析がされているんだな。そして大雑把にこういった考え方でこういうツールが使われているんだと理解するくらいがよいと思います。そして必要になったときに再度本著を手に取ればいいと思います。
ツールとしてはたとえば、MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive: ミーシー)という用語もよく出てきます。意味としては「もれなくだぶりなく」という意味だそうですが、これで対象としている業界や顧客を見てみて、ターゲットとして抜けているところはないか、逆にぶつかっているところはないかを考えるツールです。
ただ、本著では「分けられない」という部分を見つければそれはそれでチャンスだとも説いています。
あとはCSV(Creating Shared Value)や分析をするためのマトリクス(表)の作り方、フレーミング等もあります。なかなか盛りだくさんすぎて聞いているだけではちょっと難しいところが多かったです。特に図を参照されることも多いので、確り勉強をしたいという方は本もしくはデジタル書籍で読まれることをおすすめします。
ちょっと本書は盛りだくさんすぎて、聴いているだけだとコンテキストが飛んでしまってどことどこがつながっていたかがたどりにくいですね…。この記事に関してはひいらぎやが感じたこととして受け取っていただいた方がいいかもしれません…。