本著はこれまで投資をしたことがない方を対象に、まずは最初の一歩を踏み出すために投資の考え方とその最初の一歩を具体的にしめしてくれている本です。ひいらぎやも投資をしていてある程度の知識は蓄えるようにしていますが、たまに初心者向けの書籍に触れるといろいろと気づかされることがあります。2016年に書かれた本で少し情報が古いところはありますが、基本的には今でも通用する内容でまだ全く投資に触れていない方にはおすすめの本です。
【audiobook.jp】 はじめての人のための3000円投資生活 著者 横山光昭 |
長期保有のインデックスファンドで貯金を超える利益を得る
まず本著は一発で大勝ちを狙うような投資について述べている本ではありません。この低金利の時代、銀行にお金を眠らせておくのではなくてしっかり、お金にもお仕事をしてもらって長期間で貯蓄よりも大きな利益を得ていきましょうということを教えてくれています。
冒頭には10年程度で数百万円から一千万円を超える利益を得たという例がのっていますが、これは投資の影響だけではなくて、投資を行うことで「お金を増やすこと」に興味が移り、家計の節約を行い、3000円という最初のステップからその額を増やしていった結果でしょう。
ですので、そのものを真に受けず少しでも増やしていこうという考え方を持つことが大事です。本著ではバランス型のインデックスファンドを長期的に運用することを教えてくれていますが、ひいらぎやも2016年にこれを始めていればもっと違う人生だったんだろうなぁ(おおげさ)とは思います。今気づいたのであれば今始めるのが良いでしょう。月3000円の余裕をつくればいいだけなのですから。
さて、すでに結論は書いてしまっているのですが、本著で勧めていいるのはバランス型のインデックスファンドを長期保有し、月々3000円で買い増していくという方法です。
要するに、
- ドルコスト平均法で
- バランス良くさまざまな業種の株がセットになっているバランス型ファンドで
- 市場の指標に連動して売買が行われるインデックスファンドに投資し
- 月々の引き落としの額を用意すること以外は放っておく
という方法です。
ドルコスト平均法という用語自体は本著には出てきませんが、月々の購入額を決めてその枠で買えるだけの投資信託(じゃなくてもいいのですが)を買っていくという方法です。株価等は日々動きますので、定期的にある金額を決めて買えるだけの分量を買うと、高いときは少量、安いときはたくさん買えると言うことになり、所有するすべての資産の取得額は運用した期間での平均額で取得したと言うことになります。大きな額を支払って一回で投資をすると安いときに買えれば良いですが、その後値下がりしたときのダメージが大きいので、資金を用意できたとしても分割払いで購入するケースも多いようです。
バランス型ファンドは、業種などを絞らず分散して株などを購入している投資信託のことです。ある業種やある企業に集中投資をすると値上がりすれば強いですが、値が下がっていったときのダメージが大きいです。複数の業種にバランス良く投資をしておけば、ある業種の株価が下がったとしても別の業種とは連動しないため、資産全体に影響を及ぼさないという考え方ですね。
ドルコスト平均法は時間的な分散を、バランス型ファンドは業種的な分散を行い、リスクを分散させるという狙いがあります。
そしてインデックスファンドですが、これは日本だと日経平均とかTOPIXとか聞いたことがあるかと思いますが、日経新聞社が選んだ株の銘柄だとか、東証に上場されているすべての銘柄の株価変化を示す指標(=インデックス)に連動して売買を行う投資信託です。
投資信託はインデックスとアクティブがあります。インデックスは機械的に指標の上下によって株の売買を行うわけですが、アクティブファンドは証券会社のファンドマネージャーたちが相談してどの株を買ってどの株を売るかを考えているわけです。90%以上のアクティブファンドはインデックスファンドに負けているという実体があります。
そしてアクティブファンドはファンドマネージャーたちの人件費がかかっているので手数料が高い(下手をすると10倍くらいだったりします)ので、インデックスファンドでいいじゃんと言う話ですね。
で、あとは長期運用と言うことで放っておくと。投資信託は株などを買っているので元本の保証がされません。そういう意味で貯金の方がいいじゃんという話もあるのですが、5年〜10年間のインデックスの動きをみていると、一時的に暴落することがあっても、そのままほおって置くと結局右肩上がりに成長をしており、元本を割る可能性が非常に低いので、そのままおいておこうということですね。
このあたり最近よく言われていることと一致しています。基本はこれを行った上で、プラスアルファで個別株などを買ってみましょうという内容です。
また、本著で勧めているのはバランス型インデックスファンドで分散しているとはいえ、さらに国債と日本海外の分散で更にリスクを下げようとしています。
株価が下がると安定している債権に資金が移動するし、株価が上がっていくと債権から株価に資金が移動するので、それぞれのチャートは反対に動くことが多いので、このような事が言われていますが、このところのゼロ金利政策下ではこの傾向が薄れているので…とも書かれています。今のところ余り気にしなくていいかもしれませんね。
投資のポイント
一方で「都合のいい話に乗るな」というメッセージも伝えられています。
例えば、
- 証券会社のおすすめ商品は買うな
- 不動産投資に手を出すな
- ハイリスクハイリターンな商品に手を出すな
- 外貨貯金も恐ろしい
といった内容です。
基本的には証券会社が売りたい商品は買った我々が儲かる商品ではなくて、証券会社が儲かるような商品だし、アパート経営などの不動産投資は成功する人は1%ほど、そしてFXのような一発当てれば大きいけど一発失敗したらそれもそれでとても大きいようなギャンブル性のあるような商品には手を出さないことですね。
結局本著は長期的に資産を安定運用するという視点で書かれていますので、それに反することはNGとしているわけです。
そしてそれだけではなくて家計の無駄をなくして、その分を投資に回しましょうとしており、その方法も少し書かれています。
また、どれくらいの貯金(何かあったときにすぐに使えるお金)を残しておくべきかなどについても述べられていますので、本当に初心者の方にとっては良い判断基準を示してくれている本です。
ちょっと古くなってきていること
本著は2016年に書かれているため、情報が古くなってきているところがあります。
柊屋が気づいたところは以下の3点です。
- つみたてNISAが無い時代なのでこれについての記述がない(つみたてNISAは2018年から)
- 定期預金より金利が高いとして紹介されているMRF(マネー・リザーブ・ファンド)の取り扱いは多くの証券会社で終了している
- 当然ですが投資すべきインデックスファンドは今の時代に合わせて再考すべし
NISAというとNISAとつみたてNISAの両方があるのですが、つみたてNISAの記述はありません。本著は毎月の積立をすすめているのですから、イマドキであればつみたてNISAを使わない手は無いと思います。
また、MRFは少なくとも楽天証券、SBI証券では取り扱いが終了していました。これは良いことを聞いた!と思ったのですが、既に無く、楽天証券ではマネーブリッジを、SBI証券ではSBIハイブリッド預金を使って下さいと変わっていました。
それぞれ、貯金をそのまま証券の購入に使えるという制度ですが、そのような口座にお金を置いておく=証券への投資がしやすい(証券会社にとっては収入になりやすい)ということで金利の優遇がされているようです。
2022年1月現在は楽天証券でマネーブリッジを設定すると0.1%、SBIハイブリッド預金では0.01%という高金利(この数字で高金利というと気が遠くなりますが…)に設定されています。メガバンクの金利設定が0.001%という世界ですからこの数字で10〜100倍ですね。ただし楽天のマネーブリッジの金利上限が近々設定され1000万円以上については金利が低くなるという発表がされています。
そして、選ぶべきインデックスファンドですが、2021年は非常に米国株がよかったので、S&P500、すなわち米国株に連動するインデックスに連動するファンドが人気ですね。2022年には政策により米国株ののびが抑えられるのではないかと言われていますので、このあたりも注視する必要があるかとは思います。
とはいえ、既に述べたとおり長期で見て株価は右肩上がりであるという状況は変わらないでしょうから、本著の内容にしたがってバランス型インデックスファンドを買っておくというのは最善のチョイスの一つだと思います。
【audiobook.jp】 はじめての人のための3000円投資生活 著者 横山光昭 |