本書は、日本のチェーン店勤務だった著者が、イタリアの有名レストランで修業し、そして日本で開業しミシュランの星も獲得した後に、なぜサイゼリアで働くことにしたのか。その考え方や経緯が書かれたものです。本書では、経験をもとに「こういうものだから」として考え方を変えようとしない現象を「ウエイト&ストップ思考」としてこれを打開し、良い方向に変わり続けると言うことを解いています。
【audiobook.jp】 なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか? 著者 村山太一 |
現状を打破し続け、そしてより効率的で「お客さんに喜んでもらう」ためには、バイトで高校生の上司に使われると言うこともいとわないという姿勢は素晴らしいです。変わっていくということ言うことについてはこのあたりで書いたことに近いところもあるかもしれません。
高校生の頃、塾に入る事前面接の時に(といってもそんなにすごい塾ではないのですが…)、その先生に言われた言葉があります。 「人間、変わることが死ぬほど怖い」 何が怖いのか 高校生の頃に本当にこの言葉の意味を理解[…]
また、お客さん本意で考えるというのは、先日「聴いた」この本でもずっといわれていることです。
audiobook.jp で聴いた本シリーズです。この本は無料枠の中にでてきたので、おお、かの有名なと思い聴いてみました。初版は昭和40(1970)年代のものですが、表現や時代背景が違うので少しそういったところで古さを感じはします[…]
サバンナ思考とマヨネーズ理論
本書の中で著者が繰り返しとくのがサバンナ思考とマヨネーズ理論です。
「サバンナ」というと何が思い浮かぶでしょうか。ひいらぎやは背の低い草が生えていて所々に木々が転々としており、その葉をキリンがたべていたり、時折ある水たまりでゾウが水浴びをしていると言ったそんなイメージです。
そうです。そんな世界では弱肉強食が当たり前で、雌のライオンにシマウマやキリンと言った草食動物は常に狙われています。これが「サバンナ思考」の舞台です。自分がこのような場所に放り出されたらどうでしょうか。いえ、我々はすでに、弱肉強食の世界に身を置いていると筆者は言うのです。すぐに誰かに潰されてしまって食い扶持が稼げなくなるような世界ですね。
このような世界で生き残るにはしっかりと自分がサバンナにいるんだと認識してそれに見合った行動を取っていかなければいけません。これを著者は
「危機感 × 気付き × 即行動」
として表しています。常に自分が危機に直面していることを認識し、どこを直せばより生存確率を高められるかを考え、そしてそういったポイントに気づいたら、それを変えるために即行動をする。これがサバンナ思考の考え方です。
一方、マヨネーズ理論とは何でしょうか。マヨネーズ自体は卵黄と酢と油と塩を混ぜて作ります。でも昔からあるマヨネーズはおそらく経験の中や失敗からこうなるとうまく乳化して一体になったおいしいソースになると言うことが発見されたのだと思います。自分で発明することはそもそも無理でしょう。マヨネーズを知らない人はこのようなイメージすらないのですから。
筆者がいうマヨネーズ理論というのは、こういう知識は知っている人にどんどん教えてもらえということです。世の中で発明されていることはどんどん取り入れて自分流にアレンジしていく。これは研究の世界でも同じだなと思って聴いていました。世界中の研究者が論文として新たな発明を発表し、それを前提に別の人が理論を積み上げて行っているのが研究の世界です。職人さんの世の中でも、「見て盗め」という時代はやはり終わりを告げるのかもしれませんね。
サイゼリアで働く意味
サイゼリアで働くというのはまさにこれらの考え方に基づいた行動とのこと。極端なまでの効率化が行われているサイゼリアの効率化の方法を学ぶことで自分のお店にその考え方を輸入するという狙いです。
著者のお店も当初は非常にブラックだったそうですが、その中で考え方を変化させ、お店の人と人のコミュニケーションを円滑化し、そして作業を効率化することで、お店全体の売り上げと、スタッフ一人あたりの売り上げを倍増させたそうです。ブラックだった頃のやりかたに「危機感」を覚え「効率化」の必要性に気づき、その具体的な手法を学ぶためにサイゼリアにバイトではいるという「即行動」に移したわけです。
正直本書でいっていることは、「そうだよね」という話でしかありません。みんなわかっているけれどやれていないことですね。ということでまずは体を動かす。なんでもいいから。というのが一つのポイントでしょう。自分を中心にした世界を変える方法は自分でしか実現できません。まずは一歩一歩変化していくことが大事ですよね。
世の中変わってみたいと思う人はたくさんいます。今の自分、今の立場に満足出来ず、どうしたらいいのかと考え、そういった潮流の一つが今の副業ブームでしょう。お金を稼ぐということだけでなく、承認欲求を満たしたいということもあるでしょう。ひいらぎや[…]